多重知能とは?知能という言葉に対して、どんなイメージを持ちますか?「IQ(知能指数)」という言葉を最初に思い浮かべる方が多いかもしれません。IQなどのように、知能をひとつだけの物差しで測るのではなく、人間は、さまざまな知能(=多重知能)を持っているという考え方(=多重知能理論)をハーバード大学のガードナー教授が提唱しており、教師や親など子どもたちの教育に関心がある人たちの間で、最近、注目されています。「人の能力は、IQなどの単一の物差しでは測れない」「人間は、誰しも複数の知能を持っている」今まで、知能と言えば、数学的・論理的問題解決能力の高さにのみ、フォーカスしていました。この方法に対して、ガードナー教授は、「それだけでは、学習者の可能性を制限してしまっているのではないだろうか」と異を唱えました。「知能はひとつではなく、複数ある」と提唱することで、学習・教育の可能性を広げました。ガードナー教授は、知能には8つの種類があると述べています。①論理・数学的知能いわゆるIQで測られていた知能に近いものです。ロジカルな子どもに育てるためには、小さなころから、「1,2,3・・・」と数える(数唱)だけでなく、実際の飴などを数えながら、「飴が1,2,3・・・」と数えることが効果的です。②言語的知能話をしたり、文字や文章を書いたりなど、言葉を効果的に使いこなす知能です。まだ話せないような小さなときから、積極的に話しかけることが大切です。また、図鑑などを見て、虫の名前や電車の種類などを一緒に覚えるのもいいですね。③運動感覚知能体を動かすだけでなく、体で表現したりする知能です。いわゆる「運動神経がいい」「手先が器用」等と言われる能力です。動き回ったり、実際に触ったりをどんどんさせてあげるといいでしょう。④音楽的知能音楽的才能、あるいは音感等と言われる知能です。小さなころから、音楽に触れる、自分で演奏する、歌うなどを親子で一緒に行いましょう。音楽は楽しいという経験は、大きな力になります。⑤空間的知能大きさや距離感など空間をとらえる力、さらには視覚に関する知能です。空間認識力を伸ばすには、積み木やレゴ、折り紙などに慣れ親しむことが効果的です。また、小さいころから、美術館などでほんものの芸術作品に触れる機会を持つことをおすすめします。⑥対人的知能いわゆるコミュニケーション能力です。他人の感情に思いを馳せることができ、それに合った対応ができる能力です。家族や同年代の子どもたちだけでなく、さまざまな年代の人と交流する機会を持てるようにしたいです。⑦博物学的知能自然の営みに興味を持ち、それらを分類したり、関連付けたりできる知能です。子どもは、本来、好奇心旺盛なものです。子どもたちの好奇心の芽をつぶさず、伸ばすようにしたいです。季節の変化を感じ、虫や草、花などに触れる機会を持ちたいです。⑧内省的知能自分自身について考え、正確に判断する能力です。自分自身の長所短所などがわかり、目標を決め、それに向って進んでいける能力です。小さなころから、できないことを数え、怒るのではなく、できたことをほめ、伸ばし、自己肯定感、自己効力感(=目標を達成するための能力を自らが持っていると認識する力)の醸成に努めるといいでしょう。多重知能の重要性人間の知能を測ろうという試みは、古くから行われてきました。IQがその典型です。ただ、ひとつの指標だけで、人間の知能を測ることができるのかという疑問もずっとありました。たったひとつの物差しで測られた知能だけで、人間を評価するのは、学習者の可能性を制限してしまっていないかという考えです。実際、IQだけが独り歩きする弊害は、多くの人が感じていました。そこで登場したのが、ハーバード大学のガードナー教授による「多重知能」理論です。「知能はひとつではなく、複数ある」という彼の理論は、学習や教育の可能性を広げたと思います。ガードナー教授の理論は、可能性であり、希望です。IQで振り分けられて、苦渋を味わってきた人たちには、福音ですらあります。IQでレッテルを貼るのではなく、自分の可能性、子どもたちの可能性を見つめ直すことができる理論です。多重知能を伸ばすためにはひとつだけでない、複数の知能(=多重知能)について、それぞれの人が、得意不得意などを持ちながら、学習者の可能性を制限しない画期的な理論です。可能性を制限しない素晴らしい理論を、より効果的にするためにはどうすればいいのかをご説明します。①子どもに適した得意な向いている能力を見極めるさまざまな可能性を秘めた幼いころのお子さんには、なにかに限定して伸ばすのではなく、8つの知能をバランスよく、伸ばしていくことをおすすめします。いろいろな体験を積み、多くのことにチャレンジする中で、自ずとその子どもに「適した」「得意な」「向いている」能力が見えてくるはずです。性急に結論を出す必要はありません。子どもたちの関心も途中で変化することもあり得ます。小さい時だからこそ、時間をかけて、ゆっくりとお子さんの能力を見ていきましょう。②五感を使う経験に多く触れる机上の空論のような体験ではなく、子ども自身の体で、心で感じることができるような経験、体験が大切です。小さなころから、机の前に座らせて、100マス計算ばかりさせるとか、英語のアニメを見せるばかりでは、伸びる能力も伸びません。もちろん、それらの体験を積むことも大切ですが、もっと全身で感じる体験、五感を使った経験をさせることをおすすめします。子どもだけでなく、親も兄弟も一緒に、楽しむといいでしょう。五感を使う経験については、次章で詳しくご説明します。五感を使う経験の積ませ方5つ五感とは、言うまでもなく、味覚、嗅覚、触覚、聴覚、視覚です。五感を鍛えると、脳の活性化につながります。どんどん外の世界、自然の中に飛び出して、自然を感じる経験を積ませましょう。自然と触れ合うことで五感を鍛えることができます。ひらめきや思いやり、やさしさなどが自然のなかでこそ、培われます。そのためのちょっとした工夫が大切です。大人が少し手を貸してあげましょう。①味覚小さなころに身につけた味覚によって、大人になってからの味覚が規定されてしまう傾向があります。小さなころは、できるだけ、「素(す)」の味、そのものの味を体験させてあげましょう。野菜そのものの甘みを感じられるように、味付けは薄くするといいでしょう。旬の食材も大切です。お料理のお手伝いは、子どもたちも大好きです。苦手な食材も、自分が切ったり、盛り付けたりしたものなら、おいしく感じられるはずです。②嗅覚都会にあっても、自然のにおいを感じることができます。大人が忘れてしまっていたら、大人も一緒に体験しましょう。雨のにおいや、季節によって変わる風のにおい、公園の土のにおいや木々のにおい、ちょっとしたヒントを出してあげると、実は子どもたちの方が、敏感かもしれません。水のにおい、海のにおい、動物のにおいなど、いっぱい体験することができます。汚さを知らない無菌状態の中だけ育てず、動物園の独特のにおいなども体験するといいでしょう。自分のウンチやおしっこのにおいなどについても、親子で話し合ってみるのもいいですよ。子どもたちは、ウンチやおしっこなどの話題が大好きです。それらを扱った絵本もいろいろ出ています。③触覚最近の子どもたちは、触って感じる経験、体全体で感じる体験をする機会が少ないです。公園の砂場でどろんこ遊びをさせたがらないお母さんもいます。砂を触って、指の間からサラサラこぼれ落ちる感覚、ちょっと水を撒くだけで、サラサラしていた砂の感じが変わることなどを体験させてあげましょう。野原に咲く花を摘んでみる、タンポポの綿毛を吹いてみる、家庭で育てたプチトマトをもいでみる・・・いくらでも子どもたちに体験させるものはあります。犬や猫の毛のフワフワ感や肉球のプクプク感、ペットを飼うことが許される環境なら、ペットとともに育つ体験は、何事にも代えられない経験です。④聴覚鳥の鳴き声、蝉の鳴き声に耳を澄ませてみましょう。風が通り抜ける音、雨が降る音を大人自身が感じていますか?親自身がそんな音に敏感になりましょう。自然の音だけでなく、電車の音の変化を聞き取るのは、子どもたちの方が得意かもしれません。電車好きなら、音で電車の種類を言い分けられる子もいます。好きな事なら、どんどん興味が広がります。本物の音楽に触れることも大切です。また、自分自身が楽器を演奏できることもいい体験です。家族で、子どもが幼稚園や学校で習ってきた歌を大声で歌いながら、散歩するなんていう体験ができたら、子どもたちは大喜びです。そんな体験は、一生の宝物です。⑤視覚小さなころから、いろいろな絵本を読み聞かせることは、視覚を鍛えるだけでなく、親子のきずなも強めます。赤ちゃん用の絵本もいろいろ出ています。赤ちゃんの頃から、絵本を体験できるのは、ほんとうに恵まれた体験です。また、自然の中で、春夏秋冬ごとの色合いの変化を感じ取れるよう、ちょっとした大人からの一声が大切です。公園の同じ木が季節によって変化するのを一緒に楽しみましょう。夜、外に出て、空の星や月を眺めることもいい体験です。都会で見る空と大自然の中で見る空の違いにもきっと驚くはずです。まとめ五感を使った経験を多く積むことによって、多重知能を伸ばすことができることをご説明しました。現代を生きる子どもたちは、意識的に、外に連れ出さないと、自然を体験する機会があまりありません。五感を鍛える機会も少ないです。大人たちも、忙しい生活の中で、五感を使うことが減ってきています。まずは、親子で、自然の中に飛び出しましょう。最初は、一緒に自然の中で遊ぶというぐらいでいいと思います。そして、親と子が一緒に、感動を分かち合える体験をしましょう。ちょっとした声掛け、ヒントを与えてあげると、子どもたちは、驚くほど、感受性が生き生きします。子どもの頃の、こういう体験は、けっして裏切りません。子どもたちの可能性、子どもたちの多重知能を伸ばすことに役立ちます。子供の思考力を育てる「カンガエMAX。」【小学校低学年のご両親におすすめの記事】自分で考えて行動するためには?子どもの好奇心を引き出す方法「小1プロブレム」で子どもは何を感じている?問題行動や原因と家庭で出来る対策とは子供の思考力を高める!勉強以外に大切な3つのこと【10歳の壁】で子供に現れる3つの変化と適切な親の接し方とは勉強しない子にもう悩まない!小学生が家庭学習を習慣化する秘訣と子供の心理心豊かに育てたい!9歳までしか伸ばすことができない6種類の知能とは【中学受験】低学年のうちから準備しておくべきこと日記はメリット多し!小学校低学年から読解力と語彙力を育てる!