▶教科別にプロから思考力の身に着け方を学ぶ▶小学生の思考力を育てる「カンガエMAX。」監修者インタビューを読む臨界期の9歳までに身につけたい能力とは?9歳までに身につける能力と10歳から身につける能力の違いを知るために「臨界期」という言葉があります。臨界期とは脳が学習するには適切な時期があり、その時期を過ぎると学習しても習得が難しくなるという考え方です。9歳までが臨界期の能力とは、人間が生き延びるために必要な能力で、進化の過程で脳にプログラミングされている「脳が学びたがっている学習」だといえます。脳が学びたいと思う学習なので、少ない時間で学習効果が出て、習得できるようになるのです。たとえば、聴覚の臨界期は8歳までと言われ、発達のピークは3〜5歳といわれています。絶対音感を身につけるために、幼児教育として音楽が人気なのも、この臨界期を活かした学習なのです。臨界期が9歳と言われる理由は、9歳頃までに脳の大きさは大人とほぼ同じサイズになるからです。この時期の脳の成長を2段階に分けると、生まれてから3歳まで、幼稚園入園〜9歳までに分けられます。以下で特徴と身につけたい能力を紹介します。▶小学生の思考力を育てる5つのコツ|子どもの"自分で考える力"の伸ばし方■生まれてから3歳頃まで生まれてから3歳頃までは原始的な脳が発達します。欲求を満たすための行動である、よく食べ、よく寝て、よく遊び、喜怒哀楽を発散する経験が大切です。■幼稚園入園〜9歳まで幼稚園に入る頃から大脳新皮質という、人間の理性や感情を司る部分が発達します。3歳までに安心できる環境で成長すると、学びたい欲求が出てきます。3歳くらいになると着替えなどの身の回りのことを「自分でやる!」と、主張する時期もありますよね。この時期は感性豊かな時期で、脳が期待する「やってみたい」と思う、五感を使った体験が脳を育てます。臨界期のある能力は全部で6種類あります。言語的知能:言葉を聞いて、理解、記憶して考える、コミュケーション能力論理数学的知能:公平に分けるために、数学の概念を理解し、使いこなす能力音楽的知能:音を聞き分け、理解、記憶し、歌ったり、楽器を演奏する能力絵画的知能:描かれたものを理解、記憶し、表現してイメージを伝える能力身体的知能:動きを見て原理を理解し、身体をスムーズに動かす能力空間的知能:モノの位置関係を理解、記憶し、それに基づいて行動する能力関連記事▶臨界期とは?9歳までに伸ばしておきたい6つの知能を解説臨界期のない10歳からでも身につく能力とは?臨界期のない能力とは脳が期待しない学習です。具体的にいうと、プログラミングやお金の教育、特定のスポーツを毎日練習するなどは、臨界期に関係なく習得できます。読み書き、そろばんも3歳頃までは必須ではありません。9歳の臨界期まで教えないというわけにはいきませんが、3歳以降にお子さん自身が「やりたい」と思った時に学んだ方が覚えが早いということもあります。9歳までの臨界期まで発達するのは脳の器で、10歳以降でも身につけられるものは、知識という器に盛るご飯の部分だとイメージするとよいでしょう。器が小さいままご飯を盛り付けようとしても、たくさん入りません。脳が期待する学習が脳の器を大きくし、臨界期以降で知識を身につける時にたくさん入れられるようになるので、なんでも先取り学習をすればよいというわけではありません。関連記事▶先取り学習は子どもの可能性を潰す?9歳までに「やっておいた方が良い学習」とは臨界期のある能力を伸ばす学習を選ぶ3つのコツ習い事にはいろいろなジャンルの幼児教育の教室、学習教材がありますが、選び方のコツは3つあります。脳が期待する学習五感を使って体験できる臨界期のある6つの知能のうちのどれかに当てはまる習い事は6つの知能を伸ばす手段であり、何を習うかよりも、その習い事でどの知能を伸ばすのかを意識することが重要です。関連記事▶人の心をつかめるようになる!絵画的知能の重要性と伸ばし方■脳が期待する学習9歳までの子どもの脳は座学ではなく、体験からいろんなことを吸収したいと期待しています。脳が期待する学習は、ドーパミンの分泌も促進されて、記憶の定着にも役立つと考えられています。■五感を使って体験できる五感を使った体験は感動につながり、記憶に刻まれやすくなります。この感動とは、ある物事に強く心を動かされることを表します。新しいものを発見した驚き、何かを成し遂げた喜び、好きなものに出会った興奮、勝負に負けた悔しさなどの体験です。これらの感動は以下の4つの体験によってもたらされます。文化体験:新しい知識や刺激、生活習慣に触れる体験運動体験:身体を動かす体験自然体験:自然や世の中の現象に触れる体験競走体験:目標を持って他者と競い合う体験関連記事▶語学が得意になる!?音楽的知能の重要性と伸ばし方■臨界期のある6つの知能のどれかに当てはまる臨界期のある6つの知能は前述のとおりです。6つの知能は多重知能とも呼ばれ、人間が生存するために発達してきた能力です。単独で存在するのではなく、相互に影響を及ぼします。日本の教育では言語的知能、論理数学的知能が重視されがちですが、偏りすぎずに伸ばすことで、他の知能も伸ばすことができます。臨界期のある能力を伸ばす体験例ここまで脳科学的な部分を説明しましたが、難しく考える必要はありません。能力を伸ばす方法は、少しの意識で日常に取り入れることができるものばかりです。体験例として、五感を使って感動する4つの体験がどの知能にはたらきかけるかを紹介します。■お風呂で英語クイズ(文化体験・言語的知能)親子でお風呂に入る年頃のうちにぜひ取り入れてみてほしい方法です。水、お湯、蛇口、バスタブ、タオル、石鹸、床、ドアなどの目についたものを「これはなんでしょう?」とクイズを出し合います。ゲーム感覚でやるのがポイントです。アルファベット表の防水ポスターを貼っているという方もいるかもしれませんが、それは勉強になってしまいます。お風呂という限られたスペース、限られているものでやるくらいがちょうどいいのです。■季節遊び(自然体験・多重知能)現代はどこへ行っても快適な環境で、季節を感じることが少なくなっています。だからこそ季節を感じる遊びをして感動刺激を与えましょう。<春>花があり、鳥の声が聞こえたり、目も耳も楽しめる季節です。ポケット図鑑で花の名前を調べることで言語的知能が、鳥の声がどう聞こえるかで音楽的知能が、帰ってきてからもどの花が気に入ったかなど話し合うことで、体験が共有できます。<夏>おすすめはキャンプです。テントを張ったり、水を汲むのは身体的知能、たくさんのテントから自分のテントを探すのは空間的知能、自然の音に耳を傾けて見ることは音楽的知能を刺激します。<秋>どんぐり拾いや落ち葉遊びなら、近所の公園でもできますね。形や色を比べたり、持ち帰って工作遊びに使うこともでき、絵画的知能を刺激します。<冬>寒くて家にこもりがちの季節ですが、冷え込む日は氷を作ってみたり、雪が降った日は思いっきり雪遊びをしましょう。雪のある道は歩き方にも注意が必要です。転んだ経験も身体的知能を刺激することができます。■水泳(運動体験・競走体験・身体的知能・空間的知能)水泳は、飛び込んだり、水中ででんぐり返しをしたりと地上でできない動きができるので、子どものストレス解消にもなると言われています。スクールに入らなくても、プールに時々連れて行ってあげましょう。スイミングスクールに入れば、他の子たちと切磋琢磨し競走体験もできます。■遊び(運動体験・多重知能)大人から見て意味のないように見える遊びでも、子供にとっては学びの場になっています。遊びは強制されるものではなく、自分の興味から始まっているので、これこそが脳の期待する学習でもあり、集中力も高まっている状態です。小さなうちから、何もかも忘れて没頭した体験が多いと、勉強や仕事においても集中力が発揮できると言われています。集中しているうちに家事を片付けてしまいたいこともありますが、「この子は今、何を思って遊んでいるのかな?」と観察してみると、子どもの脳が期待していることの手がかりになるかもしれませんね。臨界期を考慮した教育を9歳までに身につけたい能力と10歳から身につける能力の違いと、臨界期のある能力の伸ばし方について紹介しました。ですが、大切なのは年齢ではなく臨界期ということをお忘れなく。子どもの発達には個人差が大きく出ると言われています。お子さんが臨界期を向けるまでに親がすべきことは、子どもの興味や関心のある、脳がやりたいと思う、遊びや学習ができる環境づくりです。それまでは五感を使ってたくさんの感動体験をすることで、脳の器を広げましょう。器の準備が整ったら、今度は器に知識をたくさん乗せていくと効率良く学んで行くことができるでしょう。小学生になったからと突き放すことはしないで、たくさんの体験を共有してください。臨界期までに脳の器が発達した子は、それ以降自己肯定感も高くなり、自信を持っていろんなことに取り組み、どんどん自立していきます。【小学校低学年のご両親におすすめの記事】日記はメリット多し!小学校低学年から読解力と語彙力を育てる!子供の思考力を高める!勉強以外に大切な3つのこと小学校低学年からスタート!子どもの思考力を育てる5つのコツ学習習慣を身につけたい!小学生にも効果的な「スモールステップ法」「メタ認知」を刺激!自分を客観視することで脳が成長する仕組み子供の好奇心を削ぐ親のNG行動3選!知的好奇心は脳の原動力塾は行くべき?小学校低学年のうちに身につけたい能力とは【中学受験】低学年のうちから準備しておくべきことこれで選べば失敗&後悔ナシ!チェックリストで小学生の習い事を決めよう